Lambency

03



たとえどんなに制服に絶望しても、時は流れるばかりである。
一先ず、黒い制服に袖を通し、仕度をする。
自身は知らなくても『私自身』は知っているために、最近開設されたという元帥府内に、迷うことなく歩いた。
は運が良くも悪くも、成績は良好であった。
新たに設置される元帥府内の診療所勤めに相成ったのである。
そのため、卒業まであと数ヶ月残っていたもののタイミング的に今のほうが良いということで早期に着任となった。
同期で一緒に配属される他2名も同様の理由である。

そこで問題は起きた。
ココから先は『私』も知らないのである。
この世界で生きてきた『私』にとっても大きな転機であり、道の世界なのだ。
それはのおかれた状態と等しい。
よってこれからの『私』は『』と完全に同一になるのである。
ユニオンで生きてきたと、帝国で生きてきた『私』の2つある記憶はあくまでも過去であり、未来を知ることとなる記憶は1つとなる。
しかし、という一個人が人生をやり直したわけでもないのだから、記憶が2つあっても急に精神年齢が高くなるわけでもない。
(うっかり記憶を混同しない様に気をつけないといけないけれど)
あえて言うならば、以前にも一度経験した『トリップ』のおかげでやたら開き直りが潔く、適応能力が人より少し優れているくらいである。
今でも彼女は覚えていた、初の勤務地であるアラスカ基地に一歩踏み入れたときを、転属先の「オーバーフラッグス隊」(当時はまだ「対ガンダム調査隊」ではあったが)のミーティングルームに入室したときを。
アラスカの時は内心はふてぶてしくも動きはガチガチであったし、オバフラの時は動きは滑らかであったが内心はドキドキであったと。
しかし今は甚く心も体も落ち着いていた。
もしかしたら今この時のために、今までの練習があったのではないか、これが本番だ、そう思えてきていた。
は自動ドアのセンサーが感知する場所へ立った。
シュッと静かに扉は開いた。

「失礼します。新しく配属された 軍曹です」

自然な仕種では敬礼した。
それはまるで勇退する軍人の最後の敬礼かのように見事であったと、
後に当時少佐であったトロイ軍医は彼女に話してくれたという。
室内にいた上官、同僚の返礼に合わせて手を下ろす。
この中の誰よりも洗練された敬礼は人生の先輩方の感嘆を誘った。

(第二の人生、誰よりも格好良く歩いて魅せようじゃないの)




改定:2010/03/08