[騒いだ話]
「おい、、面白いもの見つけたぞ」
「仕事して」
そう、私は忙しいのよ!と声高に主張していけれどそれすらも面倒に感じられるほど、忙しいのだ。
何より八つ当たりのようになってしまったら後味が悪いのは私だ。
あぁ、ちょっとメモの筆圧が強くなってしまった。
私の心情が顕著に表れている。
今やらなきゃいけないものリストと、早々にやっておいた方が良いものリスト。
箇条書きにして出してみると思ったよりもたくさんある。
今日は残業決定である。
悲しいのに、悲しいのに、後ろでガタガタ音がして醸し出したい雰囲気すら引っ込んでしまう。
テオの奴が何か大きなものを一人で「楽しそう」に動かしているらしい。
「よし、視力検査すんぞ」
何を言い出すのか。
テオにだって、私と同じ位の仕事はあるはずなのになんて余裕!
けれど視力検査なら致し方ない、と席を立ち上がって振り返ってみれば、なんとまあ、懐かしいもの。
「すごい…、ある意味骨董品レベル」
日本(他の国がどんなのを使っていたかなんて知らない)の小中学校保健室の隅にあるような、視力を検査する機械。
『C』の様な円の一部が欠けているマークが大きさにしたがって綺麗に並んでいる。
「何でこんなところにあるのよ」
「知らないな。軍医殿の趣味か……?まあ、楽しそうだし、やろうぜ」
不覚にもやりたい、という私の表情を見逃さなかったテオはすでに準備万端である。
私も私だから(なんか自分を表現しているのに、なんて悲しいのかしら!)歩幅でおよそ5mの位置を測って立つ。
カチッ
ランプが点く。
「これは?」
「右」
カチッ
少し小さくなる。
「上」
「んじゃ、これでどーだ」
カチッ
一気に右下のところにランプが点る。
「どれ、見えない、んー点」
「点じゃない、さすがに見えないか」
カチン
この音は私の脳内効果音に違いない。
「あっ、わかった、この小ささはテオじゃん」
「俺じゃないから」
カチッ
「んー、丸」
「答えになってないから」
「うっさい、裸眼だと視力0.7なの」
「なんだ、治さないのか」
「メガネで十分だから必要なし。車とか運転するときしか困らないし」
カチッ
今度は左下が点る。
「テオ」
「違う!」
「こんなちっさいのテオで十分よ!」
一つのランプが私の脳裏で点灯した。
黄色だった『残業必至』が、赤い『徹夜必至』に移行したのだ。
(なんかもう、八つ当たりでもいいや)