If.. まほろば×図書館戦争

ひとこと3のお題


01. 夢

とある夜の出来事。

その日、は男女共同区画にあるソファでゆったりと寛いでいた。行きかう人との挨拶やささやかな談笑する時間が大好きなのだ。もはやこの時間帯その場所は陣内の場所であると認識している部下もいるくらいで、ちょっと調子に乗りすぎたかと反省するがやはり好きな空間なので手放すのは惜しく感じそのまま今日まで続いていた。自販機で買ったミネラルウォーターに口をつけた。冷たかった水もだいぶ常温に戻ってしまっているが、味は十分美味しい。常温に戻ったときの味の差がやっぱり水道水とは違うとなどと勝手に思い込んでいるが間違っていても気にしない。そこへ一人自販機に客人が現れた。

「こんばんは、手塚」
「陣内二正、」
「もうすぐ消灯時間よ。酒なら大人しく飲みなさいね」

一瞬、手塚は微妙な表情を浮かべてから、ビールに向かっていた指が烏龍茶のボタンを押した。無言でそれを取り出し、辺りをチェックしてから手塚はの前のソファに座った。

「……一つ、聞いていいですか」
「答えられる質問ならなんでも」
「……さんは、なぜ図書隊にまして防衛員になろうと思ったのですか?業務部ならまだしも」
「まだしも、ね」

久しぶりに『さん』と呼ばれた気がし、最後がいつだったか思い出そうとして諦めた。とりあえず久しぶりなのは確かのようだ。懐かしい気持ちが胸いっぱいに広がり、この質問を『陣内二正』ではなく『さん』にした彼の気持ちがなんとなく伝わってきた。

「うーん、なんて言えばいいのかな。笠原と同じように元々本が大好きなのもある。けどさ、やっぱりそれだけじゃないんだよね」
「それって何ですか」
「何て言えばいいのやら……、うーん、でも結局最終的には本が好きだからに戻ってくるのかなあ?」
「……正直、驚きました。さんが図書隊にいるとは全く想像もしませんでした」
「あんたのどうしようもない兄さんから聞いてなかったの?」
「一切言ってませんでしたね」
「そっ。私変わったと思う?」

手塚は一瞬表情を強張らせ、躊躇いながら頷いた。

「だよね。私も、変わったなあって思う、でも根本的なところは変わって無くてさ、まだ泣き虫」
「え、」
「まあそう驚かないでよ。人間そう簡単には変われないのよ。ただ、私も一歩踏み出すことを学んだのよ、色々とね」





02. 瞳

はロッカーで一通り泣いた後、備え付けの洗面台で顔を洗った。瞳は見るからに泣いたと分かるような状態であるが、誰にも会わなければ問題無しと都合よく判断して部屋に戻ることにした。

明かりをつけていない廊下は暗いが、窓から入ってくる月明かりで足元が不安になることはない。頭は重いが、すっきりした気持ちで心は軽く、空と影で出来た風景を楽しむ余裕が出てきた。ゆっくりと鼻から空気を吸い込み、口から吐けば頭痛も少しマシになった気がする。図書隊にまして図書大学に女子は珍しい。自分の存在がどれだけ回りに迷惑をかけているか、多少なりとも自覚しているつもりである。だが、だからといって身を引く気にはなれない。ようやく自分が見つけた道を、手放すのは惜しい。数年後別の形で入れるじゃないかと説得はもちろんされた。だからこそ問いたい、数年後に別の形ではいるなら許されてなぜ今だと迷惑がられるのか?廊下の窓から寮の明かりが見えた。アレは男子棟で、女子棟よりも遥かに多くの人間が寝起きしている。明かりで動き回る人間の影がいくつも確認できる。遠すぎて光を眩しいとは思わない。だが、月が雲に隠れて廊下が一気に暗くなると、その明るさが羨ましくなる。
(……無い物ねだりみたい)
暗くても、この廊下があとどの位続いて、角に行けば明かりを点けるスイッチの場所だって分かっている。

パチン

高い音と一緒に電気が点いた。

「なんだ、お前だったのか。……お前、あの暗い廊下、明かりも点けずに歩いてきたのか?!」

思いがけないところから声が響いてきた。この通路に繋がっている階段から堂上は降りてきたらしい。

「信じられん、ああ、俺はロッカーに忘れ物をしてな。ったく、こんな時間に取りに行きたくないし……まあ、いい事にするか」

堂上は頭を掻いて、諦める素振りを見せた。真っ直ぐだけど素直じゃないこの友人の存在に心から感謝したい。


03. 心

図書大学同期たちの中で堂上と双璧を成す成績優秀者に小牧という奴がいる。あれは所謂良い奴、良く出来た奴だ。誰とも当たり障りなくさらっと交流する社交性と同時に適度に距離を取ることにも長けているらしい。決して威張る事もなければ、嫌味になるような謙遜もしない。クスリと笑った姿は様になっていて、女子からも結構人気がある。そんな奴の恐ろしさを知ったのはつい昨日の話。



私に柔道で負けた男が、相手が女でやり辛かったとすれ違い様に大きな声で話していた。そんなことに言われ慣れてしまった私は今更怒る気にもならず、聞き流していた。けれどそれを諌めた奴がいた、優等生の小牧。

「確かに女性だとやり辛いかもしれないけれど、絶対に女性が敵にならないとは限らない。君はそれを理由に手を抜くのかい?」

思いもかけない挑発的な発言にだけでなく、皆が振り向き小牧を見た。注意された男は悔しそうに小牧を睨みつけているが、小牧はなんてこと無い様にさらりと受け流している。すると小牧と目が合った。ありがとうと言うべきか、一瞬躊躇った瞬間、小牧が口を開いた。

「どうしたんだい。ああ、俺明日陣内さんと当たるけど手を抜かないからね」
「あ、うん」
「……陣内さんは言い返すべき。俺が言うのと、女性が言うのとではまた全然違うから」

そして、じゃあと言って奴は微笑を浮かべて去ってった。これを見ていた他の女子は素敵だのなんだの騒いでいたが、ロマンスだとかそんなのは一切ない。何か底冷えするものが腹の中にとどまっているのを感じた。たぶん、それは「でも」「だって」「だけど」とかを相手に一切言わせない何か。まるで突き放すように、手厳しい。怖いのか頼りになるのか、それすら定かにならないけれど敵にだけには回したくないと確信した。

後に「笑う正論」と言われることを当然知る由も無い。





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大変遅くなりましたが、3万打ありがとうございます!
(2011/03/09)サンキューの日ですね
お題は お題屋さん。 より