私的まほろば
わたしがいちばん!
「かずまー」
「あらまあ、佳主馬もにべったりねえ」
小さくて温かい可愛い生き物をは膝の上において、ぎゅっと抱きしめた。佳主馬がの服をしっかり握っていて、外れない。小さなふにふにした手が一生懸命つかんでいようとするのが可愛くて、はもう一回ぎゅっと抱きしめる。すると腕の中で佳主馬が嬉しそうにきゃっきゃっきゃと笑い声を上げる。それがまた可愛い。どうしようもない無限ループにしっかりはとらわれてしまっていた。
「かずま、。!おぼえた?」
きゃはー、と佳主馬は笑うだけではぷーと頬を膨らます。
「聖美おばさん、かずま呼んでくれないー」
「あはは、忍耐よ、忍耐」
「にんたいってなあに?」
「まあ、頑張りなさいってことよ」
の上にいる佳主馬の頭を聖美が撫でると、より嬉しそうに笑う佳主馬。むっとしたは無理やり佳主馬の手を服から外し、膝からおろす。
「聖美おばさん、佳主馬重いー」
「はいはい。まったく、名前呼んでもらえないだけでプンプンしないの。女の子は笑ってないと可愛くないのよー、王子様にだって嫌われちゃうわよ?」
一瞬でショックを受けた表情に変わったを見て、聖美は大笑いする。佳主馬は聖美の足元で「かあたん、かあたん」と呼んでいる。
「かずまなんて知らない!」
悲しいことの連続攻撃では勢い好く立って居間を出て行く。後ろで理一がゆっくり立ち上がり、がどこへ駆け出すのか見守る体勢に入ったときだった。
「 」
はっきりとではないが、佳主馬がの名前らしき発音をした。あまり距離は離れていなかったので聞こえたのであろう、バタバタと大きな足音を立てては駆け戻ってきた。
「かずま、もう一回!」
今度は聖美の膝の上にいる佳主馬の両脇に手を入れて、ご機嫌を伺いながら懇願するも理解出来ない佳主馬は嬉しそうに笑うだけ。
「かーずーまー!」
さっきのお冠はどこへやら、目を輝かしてお願いするに回りにいた人々が笑い出す。ひょっとの横に理一が現れた。
「よし、佳主馬。俺の名前を先に言ってみろ。理一だ、り・い・ち」
「おじさんだめー!私が先なのー!かずま、もう一回、って言って」
「んじゃ、わたしがさきー、夏希よ、な・つ・き」
「夏希の後は俺な、翔太。翔兄って呼べ!」
「もーおー!おにいちゃんも夏希も大嫌いー!」
打って代わって今度は皆に先を取られそうで泣き出す直前の。聖美がすかさず突っ込んだ。
「ってば、やっぱり王子様は好きなのねえー」
陣内家が笑いの嵐に包まれた。
(10/02/13)