私的まほろば
わたしががんばるとき 前
「困ってしまったうさぎは……」
は膝の上に佳主馬をのせて本を読んでいた。しかし次第に小さいくなっていったの声に佳主馬は不満そうに続きを要求する。
「うさぎはどーしたの」
返事の無いの上で佳主馬はじれったくなり身じろぎをした。けれどから返事は無かった。怒るために振り返った佳主馬の動きで、バランスを崩したはそのまま畳に倒れこんだ。つられて倒れてしまった佳主馬はの腕から這い出て初めて気がついた。
「、おねーちゃん?」
佳主馬にはが寝ているように見えた。怒って何度も声をかけ、揺するがは起きない。ご機嫌斜めになってしまった佳主馬はさっきまで読んでもらっていた絵本と、うさぎのぬいぐるみを抱えて別の人を探すことにした。廊下に出てすぐ、彼は夏希と出会った。
「あれー、佳主馬どうしたの。そんなプリプリしちゃって」
「夏希ねーちゃん、よんで」
「いいよー、でもお姉ちゃんに読んでもらってたんじゃないの」
「おねーちゃん、ねちゃった」
「寝ちゃった?」
うさぎをぎゅっと抱きしめて頬を膨らます佳主馬の様子に夏希は首を傾げた。「ちょっと待っててね」と佳主馬に言ってから、夏希は近くの和室に入っていってすぐ、
「佳主馬ー、お姉ちゃんお熱があるよ!誰か大人呼んできて!」
「おねえちゃん、ねつ……?」
夏希の声に驚いて持っていたうさぎと絵本は音を立てて床に落ちた。大好きなになにかあったことだけは分かった佳主馬は大事なうさぎのぬいぐるみもそのままに、慌てて母聖美の元まで走っていった。
「相変わらず馬鹿な子ねー、この子は」
「まったく理一のどこがいいのやら」
「理一が来たら責任をとってもらわないとなあ」
「見るからに馬鹿っぽそうに寝てるとあんたの娘よねー」
の苦しそうな寝顔を見ながら好き勝手なことを言っているのは順に、聖美、理香、太助、直美である。ただいまの体温は39.2度。昨日から風邪気味ではあったのだが、今日中に理一が長野に帰ってくると聞いて、遊んでもらうために無理をして元気なフリをしていた結果であった。聖美が温かくなった濡れタオルを水につけなおしてやる。理香は夕飯の支度があるとその場を去り、太助はわが子を心配そうに見つめていた。
「直美ー、あんたもちょっとは手伝いなさいよー!」
傍らで胡坐をかいていた直美は小さく溜息をつき、致し方なさそうに理香に呼ばれたため台所へ向かった。ちょうどその時陣内本家に着いた理一を待っていたのは、うさぎのぬいぐるみを抱え小さいながらに仁王立ちした佳主馬であった。
(10/02/16)