01
Pi Pi Pi
小鳥のさえずりとは違う、規則的な電子音が部屋に響き渡る。
眠りを妨げられたベッドの住人は身をよじりながら、憎き音源へ腕を伸ばして探る。
目覚ましを止める直前、カシャンと音を立てて床に物が落ちた。
深い青色のフレームがおしゃれなメガネである。
しかし彼女にも優先順位はある。
急ぎでなければ自分のペースを乱すことはない。
カチャッとしっかりゆっくり確かにボタンを押した後、
は気持ちよさそうに伸びをした。
毎日繰り返してしまうことだが、伸ばした腕はベッドの背にゴツンと当たってしまう。
それにも構わず、足だけは思う存分伸ばせばベッドからいくらかはみ出す。
続けて誰も見ていないことをいいことに、
思い切り大きく欠伸する姿は妙齢の女性とは思えない何かがある。
勢いよく身を起こし、先ほどの落としたものを探す。
は首をかしげながら、メガネを拾った。
それは心当たりが全く無いものであった。
「これはペンですか?いいえ、メガネです」
一瞬の沈黙を自らスルーしてから、
レンズに触れないように注意しながらマジマジと手にあるものを見た。
「誰の……?」
今朝3番目の言葉は問いかけられたまま、当然誰にも受け止めてもらえずに空気に溶け込んだ。
「あ、私のか」
歯磨きをしながら、はさっきまで見ていたであろう夢を必死に思い出そうとしていた。
何か重要なことを夢の中に置き忘れてきた気がしていた。
しかし一向に引っかかるものは無く、
身支度をしなければならないと、モヤモヤしたまま思考を終えた。
鏡に映った自分のメガネ姿はやけにしっくりしていた。
彼女は今までメガネをかけた事など無い筈なのに。
手馴れた手つきで制服を着始めたとき、朝からの度重なる違和感を確信した。
「……どこの制服よ、これ」
手に持っていたのは黒のパンツ。
ハンガーに掛かっているジャケットであろうものも同じ生地で出来ている。
肩の部分に銀色の装飾のついた、シンプルなデザインで黒を基調としたスーツ。
少なくとも、の着慣れているユニオン軍の爽やかな青空配色の制服ではない。
(あの水色の上着を脱ぐと上下真っ白になってしまうから、
迂闊に脱げない制服とは正反対の配色で、センスがいいなあと思ってしまった)