02
ふと、は『思い出した』
それは先ほどまで引っ掛かっていた夢のことではなくて、
今日までの自分が過ごしてきた日々を、である。
何事も無かったように、体中に染み渡る『記憶』は静かに語った。
自分はこの『銀河帝国』に生まれ育ち、庶民として普通に過ごしてきた。
両親は善良な市民であった。
しかし『私』が高等学校を卒業する半年前、
大学受験を目前に控えた時、両親は交通事故で『ヴァルハラ』へ逝ってしまった。
悲しみの中、『私』は金銭的な理由から志望していた大学を諦め、
帝国軍隊傘下教育機関の一つである医科大学の看護学部へ行くことにした。
学費などが無料なだけでなく、
特別職国家公務員のため高くは無いが手当ても支給されるのである。
幸い、看護師を目指していたためにそのこと自体は大きな問題ではなかった。
大学を合格した後、周りからの同情と祝福を受けながら無事高等学校を卒業した。
そして4年後の今、先日看護師免許を取得し、
帝国軍衛生隊の軍曹として入隊が決まった。
衣・食・住は保障されている上、よっぽどのことが無ければ一般の兵よりも安全である。
最短で3年後には少尉にもなろうと思えばなれるらしく、悪い話ではなかったのだ。
今一度、手の中にある制服に視線をやる。
黒い制服であるが、これは『仮制服』であるらしい。
今まで、衛生隊には女性が居なかったため制服が間に合わなかったようだ。
帝国での常識では、まず女性が衛生兵となることはなかった。
女性の看護師――看護婦が戦場へついていく場合は、従軍看護婦という形をとっている。
そんな中、規定に書かれているわけでもなかったので希望を出したら通ってしまった、という状態らしい。
おかげで、初隊員のの制服への意見は大いに取り入れられた。
ナース服はスカートタイプではなくパンツであり靴も含めて動きやすさを重視する、
ナースキャップの廃止、ポケットもしくはそれに準ずるものの充実などである。
そのため試作段階で時間をとり過ぎてしまったのである。
「ちょっと待て、なら私の本来の制服はまた白……?」
糠喜びに終わってしまった事実に、はバサリと制服を落としてしまった。
新たな『己の過去』よりも、
これから過ごさざる得ない未来の制服の事実のほうがにとってダメージは大きかった。
(誰か白衣の恐怖から助けてくれ)