04
元帥府の開設に合わせて開設してしまった診療所は、
一部の隊員の配属が間に合わず、人手不足であった。
今はまだ、準備が整わないという理由で、学校の保健室程度しか機能していない。
そしてを含む計3名の衛生兵の着任を待って、
ようやく診療所としての治療行為もはじめられるということになった。
だが、が配属された段階では、
基本的な設備はすでに置かれているものの、それが精一杯だったようである。
そのため、『保健室』としての仕事をこなしつつ、
機器の動作、用具の配置確認などの様々な準備を並行して進めているものの、
診療所の開設には至っていない。
『保健室』へは、上は提督、副官から下は兵までが、怪我をした、調子が悪い、など様々な理由で頻繁に訪ねて来た。
がその診療所で初めて看た患者はビッテンフェルト提督であった。
執務中、紙で指先を切ったためだという。
限も良いタイミングだったために、気晴らしの散歩を兼ねて来てみた、ということらしい。
何故散歩先に選んだ理由は、
せっかく怪我をしたのだからそれを理由に話題の女性衛生兵に会ってみようと思ったのだと隠さず話した。
「はあ、それでは閣下は小官に会いに来てくださったのですね」
「そういうことだ」
「期待はずれであれば申し訳ありません。
ですが、怪我を手当てするのが小官の仕事です。怪我を見せて頂けますか」
差し出された大きな右手の人差し指に薄っすらと細い線が一本。
確かに紙で切ったようである。
は内心こんなちっぽけな傷で来たのかと、呆れた。
「舐めてれば勝手に治りますよ」
「なっ……!」
やってしまった、とは後悔した。
うっかりいつも(ユニオンで)の適当さをいきなり提督相手に披露してしまったのである。
それが素直に表情に出たの様子に、提督は気分を害するのではなく至って爆笑し始めた。
「なるほど、貴様もなかなかやるな、そうきたか!」
内心、幸いそれを冗談として取られた事にほっとしながらは冷や汗をかいた。
ユニオンでも許されるか怪しいのに、
帝国でかつ初対面の閣下と呼ばれる存在に失礼なことをいってしまったのである。
2300年代の絆創膏よりも遥かに向上した目立たない絆創膏を、
は細心の注意を払いながらビッテンフェルトの人差し指に巻きつけた。
(初っ端から、やっちまったぜ……自分……)