通り雨
来 1
「ぬっ」
「えっ」
少し肌寒い雨の日、は庭に立つ目の前の人と見事にハモった。
見つめ合った彼としばらく固まってしまったのは致し方ない。
「身体冷え切ってるじゃないですか!」
バスタオルを肩からかけてやり、もう一枚のタオルで髪の毛の水分を取るため容赦なく頭をワシャワシャとする。びしょ濡れの状態でさすがに畳に上がられるのは少し困るのでとりあえず雨の当たらない縁側で雫を拭う。幸村は声も出さず、その場に直立し微動だにしない。未だに固まっているのだと久しぶりに会ったにも関わらず、当たり前のように感じ意にも返さない。次に後ろから前に回りこみ視線を合わせた。(少し、背が伸びてる……?)余分に持ってきていた乾いたタオルでそっと額や頬を拭った。
「……、あの、幸村さんですよ、ね?」
数拍沈黙した後、懐かしい赤い人は顔まで一気に赤くし叫び声とともに数歩後ずさった。見覚えのある反応に確認は取れたのも同然であった。
「そそそそそそそそ某はっ!いやっその、ちがわっなっいが、いやっ」
「落ち着いてください」
「……う、うむ」
何か胸のうちで踏ん張った様子を見せてから、幸村はとしっかり視線を合わせた。仁王立ちとまでいかずとも気迫あるたたずまいには思わず息を呑んだ。数年ぶりの再会に懐かしさがこみ上げると同時に、それほど長い間会っていなかったのかと驚かされる。あの日々の出来事はつい最近のように鮮明に覚えていたのは、だけではなかったらしい。
「その、お姿は、殿で御座るか」
「お久しぶりですね」
「御髪が……」
「……っへ?」
先ほど後ずさった分よりも近づいて幸村は、そっとの後頭部を包み込むように片手を伸ばした。ぐっと縮まった距離を気がつくことなくそのままの髪の毛先をどこか寂しそうに梳く。
「……某の櫛は不要で御座りましたな」
「ん、……ああ、思いきってばっさり切っちゃったんだ。でも使ってますよ?」
「う、うむ」
近くに迫る、一回りかそれ以上か逞しくなった幸村に、は内心戸惑わずにはいられない。あの頃のままの幸村なのに、あの頃とはどこか違うのだ。
2013/01/06