通り雨
来 6
ザアザアと降りだした大粒の雨を見ようと縁側に集まったちびーず。空は黒い雲に覆われ、辺りは薄暗くなっていた。遠くの空から雷鳴が響き、遠からずこの家周りでも光りだすと思われた。吹き出した風は、湿り気が強く、土の香りがむわっと広がる。
は居間に立ち尽くした。
さっきまで思いを馳せ、どうやってこの家で寛いでもらおうかと考えていた人物はもうそこには居なかった。そこに居たのであろう場所の上はまだほのかに暖かかった。現在の状況を整理するまでもなく、答えはただ一つだった。頭が冷静になるのでもなく、落ち着くのでもなく、醒めていくのが分かる。
「ねえ、幸村さんは?」
確認の意味も込めてそう自分に言い聞かせて、無意味と分かっていてもせずにはいられなかった。言葉が滑らかに出てくる乾いた唇が憎たらしい。振り向いたちびーずたちが一様に首を傾げる。
「いないねー。さっきまで居たのに。おトイレかなー」
そっか、は頷いた。
理解できるまで説明しろと言われたら無理だ。でも、消えたという事実と雨が降っているだけですべて納得出来る。けれども、ぽっかりと胸に穴が開いたような気がした。風通しが良くなるわけでも、胸が軽くなるわけでもない。物足りない何かと、空洞に新たに詰まった冷たい空気。
でもは知っている。この穴が埋まることはなくとも、いずれ落ちないようにそっと蓋がされることを。だからこれでいいのだろう。
次の言葉はするっと出てきた。
「たぶん、雨降ってきたし急いで帰っちゃったのかな?夕飯、何がいい?」
その時お膳にあったものが目に入った。
貰った櫛と、物の良い髪結い紐。
髪を乾かすためにまだほどいたままだったようだ。
(『これ』だけ残った。きっと、いつか取りに来てくてくれるんですよね)
2013/01/11
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生きていく中での、通り雨のような出来事を書いてみたくなった結果でした。
地縁が結んだものなので、他のジャンルで書くことはないと思うので、これで完結です。
bsrも、これで終わりになります。