私的まほろば

後日談

全てが嵐の様に過ぎ去り、またいつもの日々が否応無しに始まりだした。欠けたものの大きさに寂しさを覚えながらも、時間は無常にも流れていき、いつかはその寂しさにも慣れてしまうのだろう。この先何度、夏を迎えるのだろうかと眩しい太陽を見上げて思う。けれど一生この夏を忘れることはないだろうと、は笑った。



大半の大人たちは仕事のため帰宅してしまったため、陣内本家はただでさえ大きいのに余計に大きく感じられた。理一おじさんも「さて、どう言い訳したものかな」なんて困ったように笑いながら松本によってそのまま東京に帰ると言っていた。夏希は高3で受験を控えているから雪子おばさんたちとやはり帰宅した。健二君は夏希がいないと居心地が悪いことこの上ないだろうからこれまた帰宅。了平は甲子園が控えているから野球部でひたすら合宿するらしい。聖美おばさんはお腹の赤ちゃんのこともあるからおじさんと帰った。驚いたのは佳主馬がこっちに残っていることだ。

「どうせ、姉ちゃんが一人で簡単な肉体労働の掃除をするんでしょ」

と言って、残ってくれたのだ。(分かりづらいけど遠まわしに、「残って一緒に手伝うよ!」って自分から言ってくれたの!)思いがけない言葉には佳主馬の手をとって喜んだところ、ふんっと他所を向いてしまった。




「じゃあおチビたち、この場所からあっち、廊下のすみっこまでを雑巾がけ競争ね!」

各々、雑巾を濡らして絞る。しっかり固く絞られているかが確認してから廊下に仲良く横一列に並んだ。

「おれ、クラスで一番はやいんだぜ!」
「やだー、私ぞうきんがけキラーイ」
「ほらほら、位置について!……言っておくがな、お姉ちゃんは雑巾がけであんたたちに負けるほど落ちぶれてはいないし、わざと負けてあげるほど大人でもない!じゃあ、加奈合図をよろしくね」
「……なに、子供相手に一人で本気だしてんの」
「だまらっしゃい佳主馬!アンタも本気でやんなきゃ離れの廊下一人で雑巾がけさせるよ」
「えっ」
「よーいどん!」

一番の競争相手になると思われた佳主馬は完璧に出遅れた。このメンツで他のチビたちに負けるわけにはいかない。

「うぉぉぉおおおりゃー!」


と、こんな感じで残ったおばさんズとちびーズ、そして私と佳主馬はあの大きな家をひたすら掃除して残りの夏を消化することになったのです。余談ではありますが、この掛け声のあと見事に転がって佳主馬を筆頭に大笑いされたことは言うまでもありません。出来ることなら雑巾がけを始めるちょっと前にタイムリープしたかった。



(思い出にあるのは、ラベンダーの香りではなくお線香の香りでした)

(2010/09/05)