07
湿布を適当な大きさに切って、サイズに問題ないか最終確認のためにビッテンフェルトの指に巻く。
いつの時代も、湿布一つでの効果は違えど、治療は同じなのだな、とはどこかほっとした。
「では、貼りますね」
粘着面のシートをはがして、丁寧に指に貼り付ける。
「なんだ、詰まらん。今日は静かだぞ」
「今日はって、来られるのはまだ2度目ではないですか」
うむと細面の男は頷く。
「だが、この間前を通った時、卿は騒いでおったぞ」
は心当たりが合ったのか、顔を強張らせる。
「まあ、時には騒ぎたくもなるものです」
包帯を巻くと湿布は剥がれにくくなるが、指が動かしづらくなるのでネットだけ被せるのは彼女の心遣いである。
「出来ました。指が動かなくなると何かと不自由ですので気をつけてください。
当然、気をつけるのは指だけでは困りますが」
治療が施された指を見ながらビッテンフェルトはわざとらしく感心した様に大きな声で褒める。
「ほお、上手ではないか」
「これでお給金を頂いていますから。
ビッテンフェルト提督、明日から検診が始まりますので、手隙のとき、忘れずにいらして下さいね」
話しながら、いつ誰がどの様な怪我で、どんな治療を行ったのかを所定の用紙に記入する。
けれど念をおすのは怠らない。
反応がイマイチであった事を気に留めることも無くビッテンフェルトは席を立ち、伸びをしてから肩をほぐす様に回す。
その様子をは黙ってみていたが、一瞬考えるような素振をするも、書面に視線を戻す。
「全く、執務ばかりだと嫌になるな」
ペンを置いて、は再度後ろの棚へ向かう。
「運動不足には注意なさってくださいね。何事も、程よい疲労が重要です」
背を向けたままのに「分っている」と溜息交じりの言葉が返される。
何かを探すように、引き出しを開けたり、缶の中身を確認したりするを背に、
彼は「じゃあ。」と片手を挙げて診療所の扉から一歩出たとき、「待って下さい」と声がかかる。
振り向けば、短い距離を小走りで来る。彼女の手には3粒のビニールで包装された飴。
「失礼しました。提督、お疲れのときは糖分です!」
そう言ってビッテンフェルトに手渡す。
「執務も大事ですが、お身体を壊されては元も子もありません。適宜休憩はとってください」
は見送るため、自身も診療所から廊下へ出る。
「お大事になさってください」
(その後執務室で飴を舐める姿が目撃されたとか……あまり見たい画ではないけれど)