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大学の同期たち看護婦も、軍人である自身も、
ローテーションで休暇をとる方式であるために、平日に休日が出来てしまう。
はせっかくの休日にも関わらず、一緒に出歩く仲間が今回もいなかった。
当初は一人で日用品の買い物するのも楽しかったが、
やはり続けば飽きてくるものらしい、としみじみと感じていた。
時間を持て余していた彼女は、
時間潰しに作るお菓子のレシピ本を選ぶ事に今日という一日を費やす事を決意した。

そして現在、オーディンで1・2を競う規模の本屋の一角にいた。
は数多あるレシピ本の中から、自分に適したレベル
――初心者向けであり、用語の説明や図説が多くかつ、分かりやすいものかが基準――
であるか、完成する菓子が自分好みであるか、時には端から一冊ずつ手にとり、時には数冊同時に見比べ真剣に悩んでいた。
なにせ、彼女は時間を潰さなければならない。
(もう一巡したら、他の本屋にも行こうかな)
ふう、と肩の力を抜いたに、愛らしい小鳥が囀るような声がかけられた。

「そんなに、何を一生懸命悩んでいらっしゃいますの?」

美しく豊かなウェーブがかったクリーム色の髪に、すみれ色の瞳を持った女性はちょこんと小首を傾げた。
天使にからかわれているのかと、一瞬は我が目を疑うものの、
幾度かの瞬くで背中に翼がないことに確信を持て、漸く自我を取り戻す事ができたのだ。

「あっ……ごめんなさい、ずっと同じ所に立っていて……。
あ、この本ですか?」

クスリと微笑む天使の様な女性の笑みからは、人を馬鹿にするようなものは一切感じられなかった。
笑みを浮かべた彼女エヴァンゼリンは楽しそうに形の良い、小さな唇を動かした。

「違いますわ、フロイラインの事です。
お菓子作りは好きですの?」

悪意の無い質問に、は素直に話してみることにした。

「えっ、いいえ。
苦手というか、作れなくて、作れるように成りたいなあ……と、思いまして……」
「そんな感じがしますわ。
良かったら、私と一緒に作りません?
いつも一人で作っていて、詰まらないの」

暗に菓子作りは得意だから教えるし、付き合ってくれませんか?と申し込まれたのだ。
とすれば、本を見ながらやるよりも誰かに教えてもらったほうがずっとわかりやすい。
ましてや休日を潰す友が出来ることは喜ぶべきである。
しかし、新手の詐欺であったらなどと少し思案してみるものの、どうしてか疑えそうに無かった。
こういった場合、は己の勘に従うことにしている。


(彼女を疑えないのは、彼女だから)
休日

09/07/30
ヒロインの同期だとまだ学生の筈ですが、卒業を待たないで、 人員が足りてない病院などに送り込まれているということで…!
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