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はこの邂逅が持つ本当の意味をまだ知らない。
そんな中、エヴァとのお菓子作り――実際のところエヴァによる個人レッスンになっている――が、
片手の指では数えきれなくなってきた頃、事は起きた。
エヴァの家で行われる、お菓子作りは今日も完成間じかとなっていた。
アップルパイが見事に焼け、家中が林檎の放つ程よく甘い香りに満たされていた。
作った二人でさえ、自惚れても罰は当たらないだろう、などと笑いあっていた。
その時、家の中全てを引きずり出す様な勢いで扉は開け放たれた。
「エヴァ、ただいま!
会議が急に無くなって早く帰れたんだ……」
喜びが溢れんばかりの声が徐々に小さく、力の無いものへ変わっていく。
「ウォルフ、お帰りなさい」
エプロンで濡れた手を拭きながら夫を迎えに行き、互いの頬へキスをする。
どこかほっとしたような自身の夫を可笑しそう笑ってから、彼女は確信犯的に微笑む。
「どうなさったの、ウォルフ。
早いお帰りで嬉しいのに、……変な顔をしていますわ」
「すまない、エヴァにはエヴァの予定が合ったな。友達がいるのだろう?出直してくるよ」
「まあ、出直す必要なんてありませんわ。
それよりも出来立てのアップルパイを味見するという、大切な任務が待っていますのよ、ね、」
夫の手を引きながらキッチンへ誘うエヴァはたいそう楽しげであり、ミッターマイヤーはそれを拒まなかった。
?、とエヴァンゼリンは反応が無い友を訝しみ、名前だけ呼んでみた。
その友、は妙に意識がはっきりしているもの金縛りにあったかの様に動けず、声すら出せずにいた。
何故なら、新しく出来た菓子作りの得意な人の身体を持つ天使はあのミッターマイヤー提督夫人であったのだ。
ビシリと固まってしまったに、あらまあ、と言葉とは裏腹に困った様子を一切窺わせずに彼女は笑った。
ミッターマイヤーはどこか見覚えのある、固まっている女性の正面に夫人によって立たされた。
「紹介するわ、。
私の夫のウォルフよ、で、あなた、彼女がこの間話した新しい友達のよ」
満足そうに笑うエヴァに対して、少し困ったようにミッターマイヤーはへ視線をよこす。
も意を決して、己を叱咤し、身体を再起動させた。
「ミッターマイヤー提督、元帥府衛生課所属の・軍曹であります。
その、提督のお宅とは知らず勝手に上がり込んでしまい申し訳ありません」
ミッターマイヤーは面白そうに頷いた。
夫人へ目配せする。
「なるほど、貴官が噂の『面白い奴』であったか。
まあ気にするな、貴官はエヴァの友達なのであろう。たまたま友達の夫が俺だっただけさ」
「そういうことですわ」
(そういうことなのか……?)