15

キルヒアイスはカストロプ星系の動乱をを見事に鎮圧し、中将へ昇進した。
それは、彼の実力を示しただけでなく、依然同様、威張ること無い姿は皆により一層好感を持たれた。
そしても、自身の中で彼の株を上げた一人であった。
所用の帰り、偶然彼と扉の前で出会い、彼は扉を開け、が通すために道を譲った。
彼女が通るのを待って、彼もまた扉を潜った。
本来ならば当然中将であるキルヒアイスとが行うべき行為は反対である。
しかし、彼は何事でもないように「当然の事」と謂わんばかりに微笑んだ。
けれど、一人の女性としては嬉しくも、
男性と分け隔てされることなく同じだけの仕事をこなす事によって己を支えている立場としてはいくらか悔しい。
また、部下として困ると訴えてみれば、苦笑しながら答えた。

「確かにそうかもしれません。
ですが、身分、役職、階級に問わず、全ての女性にそう接するべきだと、私は思っています」

世界中、宇宙中の男性に聞かせてやりたい言葉だと、は心底思った。
何より、自分よりほんの数年生まれてくるのが遅かった彼は、自分よりも遥かに人格者であった。
彼が若い――否、幼い頃からの見事な教えと、苦労が伺えた。
彼らはずっと昔に少年であることをやめ、少しでも早く大人になろうとしたのは経歴から察するのは容易で、
は自分に出来る、ささやかなお礼と『お姉さん』としての気持ちばかりのご褒美を思いついた。
些か上官に対して失礼が過ぎるのではと思ったが、
彼らは――特にキルヒアイスは気にする人に思えなかったので――彼女はウエストポーチの中を片手であさりだす。

「キルヒアイス提督、この度は受勲、そして昇進おめでとうございます」

キルヒアイスは少々面食らったように、目を開く。
照れを隠すことなく、はにかみながら礼を言った彼の様子に、満足げにけれど不敵には笑った。

「キルヒアイス提督、グレープとオレンジ味のキャンディは、どちらがお好きですか?」

非凡な彼でも、あまりにも唐突な質問についていけなかったのだろう、
年相応かそれより幼いくらいの表情できょとんとする。

「キャンディの味です。あ、どちら、いや、甘いものは苦手ですか?」
「いえ、……キャンディも甘いものも好きですが」

返答には悪戯な笑みを深めた。

「ならよかったです」


(ご褒美の定番といったら!)
飴玉

09/08/05
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