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陽射しが日毎強さを増す季節のよく晴れた日の午後であった。
今日という休日も、は例にならってミッターマイヤー提督宅――別名エヴァのお菓子教室――にいた。
近頃は提督宅という事にも慣れてきたのか、緊張する事も無く、
ミッターマイヤーが帰って来ても家に馴染んでしまうまでになっていた。
普段と違う事を指摘するならば、今日はミッターマイヤーも休日であり、
が訪れた時から在宅していた事である。
最初は遠慮したのだか、「遠慮せずに来るように」とお菓子の師であるエヴァに言い切られた為、
今現在、温かなミッターマイヤー提督夫妻と一緒に出来立てのお菓子を
テーブルに並べて準備するといった状態に陥っていた。
その時、この状況を一時でも打開してくれる――と、は思った――家のチャイムが鳴った。
ミッターマイヤーは右手にティーポット、左手にはスコーンが盛られた皿を、
エヴァはティーカップを載せたお盆を持っていた。
ちょうど手が空いていたのはだけであった。

「悪いな、代わりに出てくれないか」
「はい。でも私なんかが出て宜しいのですか」
「構わん構わん、たいした問題じゃないさ」

たいした問題なのではないかという思考は捨て、くるりと玄関の方へ向かったの背後で
ミッターマイヤー夫妻は互いに見つめ合い、無言で笑みを零した。

「はい…――」

ガチャ、と――は人の家なので普段よりも3割増の笑顔で
――玄関の扉を開けた先には“金銀妖瞳”の美青年でも有名である提督が立っていた。
彼女の笑顔が刹那に凍り付いたのは言うまでもない。

「ほお、貴様は人の家の客人を選ぶ権利があるのか」
「あ……いえ、そのとんでもないです」

ロイエンタールは皮肉な笑みを浮かべながら続ける。

「では貴様が咄嗟に戸を閉じようとしたのは気のせいか」

は言葉が紡げない。
目を逸らしたら負けだ、という何処からか湧いて来たか定かでない意志だけで
相手を見つめ返すのだが、背中に嫌な汗が伝うのを禁じ得ない。
蛇に見込まれた蛙の気分とはこんな感じなんだろうか、の脳内は全力で現実逃避を開始していた。
ミッターマイヤーと出会った時よりも衝撃は大きく、未だ動け無い。

「ロイエンタール、あまりエヴァの友人を虐めないでくれ」

笑いを堪えているのが誰にでも分かるような声でミッターマイヤーは止めに入った。

、ロイエンタールは私の友人だ入れてやってくれないか。
とって喰ったりしないようには俺から言っておくさ」

ロイエンタールがミッターマイヤーに批難の視線を送るが、意に返さない。
もやっとの思いで扉をちゃんと開け、身を後ろにひかせた。
そのまま直立不動なに、入って来たロイエンタールは容の良い筋の通った鼻で笑った。

(美人に嗤われると凄く悔しい)
休日U

09/08/08
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