18
目の前にはミッターマイヤー提督夫妻、
かたや隣にはロイエンタール提督、そんな状況には自分の目を疑った。
余りにも異分子過ぎる自分に自分が耐えられなさそうであった。
美味しい筈の紅茶も、焼きたての良い薫がするクッキーも味わう余裕など皆無に等しい。
原因――後にこれをは敗因と言う――は、夫妻の言葉に従ってしまった事である。
夫妻は最初からとロイエンタールを引き合わせるつもりであった事は
先ほどロイエンタールがミッターマイヤーに問い質して明らかになった。
その時のロイエンタールの感想には叫びたくなった。
「なんだ、話しに聞いたのよりも遥かに小者ではないか」
(いったい、なんて言い触らしてるんですかビッテンフェルト提督!)
夕飯までの時間、女性陣はまったり会話をしながら夕食作りを、
男性陣も客間でコーヒー片手にお話となった。
エヴァとミッターマイヤーとならまだ良かったが、
ロイエンタールがいるならば今すぐ理由をつけて飛んで帰りたい気分のだった。
「なんで、こんなことしたんですか……」
「あら、それは面白そうだったからよ。
それに、貴女は私の友人で、たまたまロイエンタール提督がウォルフの友人だっただけよ。
ウォルフが貴女をロイエンタール提督に会わせてみたかったんですって」
はペチと右手で額をおさえた。
引き合わせた方は楽しいだろう、と小さく溜息をついた。
「あらあら、幸せが逃げて行ってしまうわ」
「私が今逃げ出したいです……」
離していたお玉杓子を再び手にして、鍋を掻き交ぜる。
「だって、」
小さく声を潜めて、エヴァの耳元で囁いた。
「あのロイエンタール提督ですよ!」
言い終えるとはさっと離れて何事もなかったように料理を再開した。
エヴァが笑った。
「あら私はロイエンタール提督を尊敬しているわ」
が不服そうにしているのを見て、エヴァはより笑みを深めた。
「楽しそうに料理をしているな」
愛する妻とその友人に話しかけたミッターマイヤーは両手にコーヒーカップを持って、
それを肩の高さまで掲げた。
「盛り上がっているところ悪いんだが、お代わりは貰えるかな」
「まあ、すっかり忘れていましたわ!
今持って行きますから、お戻りになってて下さいな」
「いやいいよ。それぐらいは自分でやるさ」
「でもロイエンタール提督をお待たせするのは悪いですし」
「そのくらいロイエンタールだって待っていられるさ」
の居場所はなかった。
料理に集中する手もあったのだが、
自分一人でやると手の込んだせっかくの料理がどうなるか分からないので
とりあえず火だけ消して、キッチンを静かに後にした。
(なんかお腹いっぱいです)