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思いがけないことに、会話再開の口火を切ったのはロイエンタールであった。
「なぜ俺が女を嫌っていると思った」
は曖昧に笑った。
「んーなぜ、ですか。強いて言うならば勘です」
「女の勘というやつか」
馬鹿馬鹿しそうにロイエンタールは吐き捨てた。
そんな様子には苦笑した。
「違います。私の勘です。私、自分の勘を結構信じてるんですよね」
「馬鹿げてる」
「勘って、いつも自分と一緒にいるじゃないですか。
嘘をつかないし、外れても結局は自分の責任だから他人を責めなくて済みます」
ロイエンタールが少し瞳を細めた。
「因みに女性嫌いかな、と思った理由はミッターマイヤー夫妻です」
「ほう」
「女性との噂をよく聞く割には、夫妻の事を随分と冷めた眼で見ていらしたので」
発言してからは、しまった、と思ったがいまさら引き下がれ無い。
「だからピンときたんです」
自走式なため、ロイエンタールは顎に手をあて考えるそぶりをみせた。
「なるほど。では答えてやろう。俺は女なんて生き物を信じていない」
「そんな感じがしてました」
珍獣を見るかの様な目で、ロイエンタールはを見た。
彼女は彼女で開き直ったおかげか、もはや気にはしない。
「馬鹿で口のききかたも知らない奴にしては、ましな観察眼を持っている様だな。
せいぜい、」
言葉を切り、ゆったりとした動作での眼鏡を外す。
あまりにも違和感を感じさせない動きであったため、は最初何が起きたのか分からなかった。
「……ん、あっ!眼鏡、眼鏡を返してください!」
眼がー!眼がぁ!と両手で眼を押さえているに、
ふっとロイエンタールは呆れた様に息を吐き、の手に眼鏡を返した。
「五月蝿い。貴様は色気のイの字も無いのか」
眼鏡をかけ直してからが答える。
渾身のネタが分かって貰えなかったせいか、心持ち残念そうである。
「誠に残念ながら食い気しか扱っておりませんので。ついでに、入荷の予定もございません」
「呆れた奴だな。女として恥ずかしく無いのか」
がむっとしたのを表情に出す。
「人間は容姿じゃないと思ってますから。
結婚するなら私のこの食い意地を愛してくれる人にするだけです!」
「手に負えんな」
ちょうど良く、車が停まった。
そこは女子寮の少し手前で、ロビーの明かりも見える場所であった。
は車を降り、辺りを一回見渡してから、腰を屈めて車内を覗き込む。
「送って下さり、本当にありがとうございました。
でも私もこれで今日からは夜道だけではなく、昼間も気をつけなければなりませんね」
なぜと謂わん気に形の良い眉を曲げる。
が笑った。
「だってあのロイエンタール提督に送って頂いたんですよ?女性の妬みは怖いですからね」
「それは俺への忠告か?」
「滅相もない。今日はありがとうございました。では」
「ふん、小物がよく言う。せいぜい、気をつけて帰る事だな。世の中には見境の無いやつもいるかもしれん」
が車から一歩下がると、車は走り出した。
(さて、気をつけるべき相手はどの部屋から見ているのやら)