22
「率直に聞こう。戦争に行きたい奴はいるか」
元帥府の衛生部においてトップのバルト軍医中佐が言葉自体に重さが存在するかのように、低く重く言った。
朝のミーティングの時間、その場には診療所のメンバー全員がそろっており、一様に表情を引き締めた。
誰かが嫌々でも行かなければならないのは明白であった。
その時、勢いよく手を挙げた者がいた。
配属されて半年のであった。
「なら、私が行きます!」
テオが目と口を豪快に開いた。
「お前馬鹿だろ」
「黙らっしゃい。バルト中佐、私、宇宙大好きなんです、宇宙に少しでも行けるなら!」
先輩であるエンデ少尉が溜息をついた。
「遊びで行くんじゃないぞ。そもそも、女性がついていけるのかさえ――」
「病院船でも、補給部隊でもいいです、宇宙で働かせてください!」
ルナが言葉を遮るように声を張り上げた。
こうして一同は渋々頷き、の派遣がひとまず決定された。
テオが「辺境の要塞にでも行けばいいのに」と呟いたのをは聞き逃さず、
すかさず向こう脛を高くないヒールで蹴った。
以外のメンバーから同情の視線を一通りテオが受け取った段階で、
定員2名の『もう一人』の人選が始められた。
昼夜も季節も何も関係ない宇宙では9月から10月に日付けが変わったのを無感動に受け止めた。
しかし、オーディンを発ってから、未だにひたすら胸が高鳴り続けさせられていた。
惑星の大気を出て地球時代とはレベルの違う宇宙に触れた瞬間は、涙が溢れた。
当然窓など無く、窓に似せて作られた液晶画面を通して、だが。
光年単位の距離、度々行われるワープ、無数に瞬く星々がを興奮させた。
ユニオン時代にも宇宙での戦闘はあり、
その都度地球から離れたことに感動していたが、もはや比ではなかった。
西暦1900年代の後半に生まれた女性が、
宇宙暦796年に小さい頃から抱き続けていた夢をまた一つ、より深く叶えた。
ただ一つ、彼女にとって残念なことは、
本来の母性である地球が栄華の過ぎ去った、辺境の星に過ぎないことであった。
(いつか、行ってみたい――、もう「帰る」という表現では無いけれど)
そして10月になって一週間も経たないうちに、帝国の辺境に位置した低開発の星には降り立った。
オーディン以外を知らない彼女が空から見たこの地上はまさに荒野であり、
小さな町といえるかも定かではない集落の覇気は、風前の灯のようであった。