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結局残り1名の貧乏くじを見事引いたテオと自ら名乗りをあげた、
それと普段は病院勤務の看護師と軍医2名でこの惑星担当になり、そこで目にしたのは酷いものであった。
飢餓だけでは無い、同盟側との衝突によって出来た暴力と略奪の傷痕が力無く切々と語りかけている。
宇宙にいた時とは違う何かが、の中で脈打った。
さすがにそこで崩れ落ちる事はなかったが、
今にもその場から逃げ出そうとする衝動に支配されそうになったのを踏ん張って耐えた。
この惑星担当の出入りの激しい補給部隊の健康管理と、
住民の健康状態把握、衛生分野で不足しているもの把握、発注が仕事だ。
実際に治療を行わないのは、現地にも医者と看護師はおり、
不足分はたちが要請する事で来る、軍医と従軍看護婦の仕事である。
故に彼女達は完全に後方支援であり、早期復旧の手伝いしか出来ない。
最初の数日、要請した医療関係の補充要員が来るまではそれなりに駆け回ったものの、
それ以降は完全に衛生監察官となってしまった。
そして普段と変わらない、帝国軍兵専用の診療所での待機。
視察の為、一日に一回足を運ぶ病院で駆け回る従軍看護婦がには少し羨ましく感じられた。
(私は、もっと皆のために走り回ってる方がしっくりくる……)
そして数日後には、必要な分の補給も終わりを迎えた。
臨時であった診療所も解体し、帰路での補給部隊の衛生管理のみがたちの少ない仕事となった。
暇はに最初の頃何を思っていたのかさえ
忘却の彼方に押しやってしまう程の思考の時を惜しみ無く与えた。
もそれに甘んじて、もはや大空と呼ぶには忍びない宙にも劣らない好き勝手な考えを
広くない輸送船の中で無限大に広げてみる事にしていた。
宇宙の移動は楽しく、不謹慎と言われようが参加した甲斐はあったと言える。
しかし一仕事終えた筈であるのにすっきりしない理由は分かっていた。
けれど、彼女はそれをすっきりさせるだけ明瞭な答えは持ってはいない。
同盟に行けば女性の選択肢が広がって自身の持つ可能性を試せる事だろう、
何よりの強みは帝国や皇帝への思い入れが全くといっていい程ない事だ。
いまさらながら、忠誠心の無い自分がいかに役人や軍人向きでないことを突き付けられて、苦笑を浮かべる。
「本当にいまさらだ」
独語してから声を無意識に発していた事に驚き、自嘲を深めた。
だが自分は亡命出来ないだろう……、は確信する。
お菓子の師であるエヴァに、彼女のよき夫であり優れた司令官でもあるミッターマイヤー提督に、
そして帝国史上女性初であろう衛生兵となった自分に愛着を感じ始めていた。