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気がつけばいつの間にやら『曹長』になっていた4月6日、
ラインハルトは『帝国軍最高司令官』になるのと同時に勅命を下された。
国賊を討伐せよ――。
積み重ねてきた準備がついに試される時がきたのだ。
数日後、は再び宇宙へ旅立った。
「、あなたもこの船だったのね」
声を掛けられ条件反射的に振り向いたの視界に飛び込んで来たのは大学で親しかったとされる先輩であった。
「クララ先輩」
「お久しぶり。相変わらず、元気そうね」
「お久しぶりです。従軍看護婦をされてたんですね」
は内心『自分』の反応を面白がっていた。
自身の中の彼女はクララを敬愛しており、声を掛けられた時心地良く胸が弾んだのだ。
そこへ、帝国のおしゃべりな小鳥たちが扉から流れ込んできた。
「、あなた本当に軍人やってるのね!」
「ちょっとこの子パツツタイプ履いてるわ」
「私に上着着せて!」
久しぶりに会った大学の同期、先輩がわっと騒ぎながらを取り囲んだ。
話題の当の本人は案外知らないものであるのが世の常で、女性初の衛生兵は看護婦内では有名であった。
「ねえ、軍服着せて!」
「私にも!」
これに続いて「私にも!」の声は至る所であがり、仲間たちが脱がせにかかった。
「ちょ、分かった分かったから!自分で脱がせて!助けてクララ先輩……」
「ま、頑張ってね」
あまりにも素敵な笑顔に迂闊にもガクリと脱力してしまったのが運の尽き、
普段から患者の着替えを手伝う彼女たちにとってなんて可愛いものだった。
いとも簡単に上着を脱がし、皆が順々に着ていく。
はため息をつくしかもう術は無かった。
しかしそのため息さえ、ついている隙はすぐに無くなった。
上着が回ってくるのを待ちきれない小鳥たちが次の手段を講じたのである。
「はあ、はあ……」
『衛生兵オンリー』である事務室には飛び込んだ。
「どうした、そんな焦って……ってその恰好どうした!?」
テオが驚きに席を立ち、へと駆け寄る。
その様子に他の人々も気が付き、気遣う様な視線を二人に送る。
が首を横に振った。
「ちょっと、ちょっと襲われた、だけ……」
大きく息を吐き、ゆっくり呼吸を確かめながら空気を肺に導く。
そんなにテオは声が大きくなりそうになるのをぐっと堪えた。
の両肩を掴みつつも、柔らかい表情になるよう努めた。
「ちょっと襲われたって、おい。誰にだよ。充分軍法会議ものだからな」
パンツのベルトを直しながら再び首を振る。
「違うの、その大学の仲間たちにね……」
漫画ならばガクッと効果音がつく動きでテオの肩は下がった。
「そうだ、そうだよな。本当に何かあったんなら返り血がついていても可笑しくない」
「なんか腹が立つ言われようなんですけど」
が手に持っていた上着に腕を通せば、テオは肩から手を離した。
(ふとよぎった懐かしいノリに涙腺が熱くなったのは内緒)