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たち軍人が現場――始まれば第二の戦場、生死を分ける病院船内――で従軍看護婦へ指示を出しながら共に治療にする。
幾つもあるグループのどれかに配置され、そこのグループが幸か不幸かの知り合いばかりのところであった。
(もっとも、従軍看護婦になる様な人が出た大学など決まってくるため、何処へ行っても同じだったかもしれない)
そして数多ある病院船の中で唯一デザインの違う病院船の旗艦エイルがしばらくの住まいと相成っていた。
総旗艦を始めとした船と密に連絡をとり、動きを決め指示を出す病院船の親玉である。
戦場においても人道的見地から病院船を攻撃することは固く禁じられているため、
戦闘艦に比べて遥かに安全ではあるがそれもあくまで決められた条約の中でである。
実際に戦場へ出て、撃たれてしまえばそこまでである。
故に当然のことながら前方で戦闘を行っている艦隊の指示に従い救出へ向かう。
そして数時間前、ついに貴族による内乱が直接の戦闘へ繋がり、病院船に乗る人々の戦場も幕を開けた。
《――総員に告ぐ、これより本艦らは本隊と共にアルテナ星域方面へ赴き、
到着しだい順次各艦は医療行為を開始するものとする。繰り返す、これより……》
艦内に響き渡るデーゼナー軍医大佐の言葉が人々の緊張を高め、もその一人であった。



また一つ、銀色の特殊なシートで出来た袋の中に冷たくなった人を容れ、チャックを閉める。
まさに人を梱包し配送に出すこの行為がいったい何度目なのかはわからなくなった。
病院船エイルが戦場に到着したとき『アルテナ会戦』はすでに終結していた。
今彼女が行っている仕事はその数日後に行われた『レンテンベルク要塞攻略戦』の後片付けである。
装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将によってミンチにされてしまった人々がほとんどである。
第六通路の九回までの突入では生存者よりも死者の方が圧倒的に多く、被害は甚大であった。
腕の骨はへしおられおかしな方向へ曲がり、内臓は潰され、中には頭蓋骨が粉砕しており頭部の原型が定かではない者もいた。
身元確認の作業と、『梱包』。
そしていつまでも病院船に載せておいては場所をとってしまうので空になった帰りの輸送艦に載せオーディンへ返す。
は絶えることなく襲ってくる吐き気と戦いながら黙々とこの作業を繰り返していた。
ある時、が戦死者の遺体の移送状況と負傷者についての報告を兼ねてブリュンヒルトへ搭乗していた。
本来のならば病院船とは品も格も違うブリュンヒルトを散々観賞するところだが、そんな気分ではなかった。
それでも一つ、どんなに精神的に参っていようと感嘆をもらさずにはいられないものがあった。
艦橋に一歩踏み入れた瞬間に襲われた、輝きが溢れ出した星に一面圧倒された世界の力強さ。
頬に思いっきり平手打ちを受けたような錯覚を起こしかけ、息を呑んだ。

ラインハルトへの報告も終え、帰り際ブリュンヒルトの通路ではミッタマイヤー、ロイエンタール両提督と出会った。
の青白い顔を見て、病院船の状態が察せられたのであろう、
ミッターマイヤーは労いの言葉と共にやさしくの肩を叩いた。
またロイエンタールも同様に彼らしく労いの言葉を掛けた。

「卿にとっては始めての病院船勤務だったそうだな」
「はい」
「自身に合わないならば地上にずっといることだな、適材適所というものがある」
「……いえ、このぐらいでへこたれてるわけには行きません。明日には立ち直ります」
「ほお、一日で立ち直れるというのか」

が一度ゆっくり瞼を落とし、深呼吸して、開く。

「立ち直させます。自分だけ逃げるのは、嫌ですから」
「そうか。それは卿の勝手だが、体調を崩して周り迷惑だけは掛けるなよ」

この時は気付かなかったのだが、後にこの会話を聞いていたミッターマイヤーから指摘されて、
ロイエンタールが初めてを『卿』と呼んでいたことに気付くのは当分先のことである。
こうしての初陣は後味の悪い気分のまま幕を閉じた。
(宇宙がこんなにも寂しい場所だとは思わなかった)
初陣

09/08/26
艦内の放送内容はちょっと矛盾がある気がしますが、大目に見てください。
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