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も一度頷いてから続けた。
「まずは今私が把握した結果急を要するところから言わせてもらいます。
ブレッヒ少佐班、デルプフェルト中佐班において脱脂綿と包帯が不足して、
中佐班では完全に遺体の収容スペースが埋まってしまっています。
次の輸送船団を待っていたらエイルは病院船ではなく、霊柩船になってしまいます。
近くにミッターマイヤー艦隊への補給帰りで空の輸送船団がいます、今すぐ要請して来てもらうべきです」
大佐は頷き、近くに控えていた副官と視線を合わせた。
副官は「了解しました」とだけ話し、足早に部屋を出て行った。
「しかし、これでは卿の言う問題を、根本的に解決したわけではない」
「はい。根本的には無理ですが、今すぐに少しでも改善出来る案はあります」
「言ってみなさい」
は一度深呼吸をした。
――まず病院船に運ばれて来るまでの間に、トリアージを徹底する事、
またトリアージを行う医師はそれに専念しより多くの者を見る。
軽傷、早急に手術を要しないもの専門に診るグループを一つまたは二つ作り、
他のグループには重体、重傷患者を優先的に診てもらう。
遺体の収容スペースについては船のドッキング部分付近にある倉庫――医療関係の消耗品を入れているところ――を全体の集積所にし、
医療品は届き次第、8割は順次各グループへ配給、もちろん消費率にあわせて。
残りの2割は事務部が予備として常に確保し、その都度足りなくなった場所へ配給することによって不足を防ぐ。
軽傷専門グループには遺体収容スペースを無くし、そこを今後輸送されてくる事務部の医療品置き場にする。
戦闘艦隊や輸送船団とも連絡を密に取り、毎回満載にせずとも良いから小まめに来てもらう――などである。
が絶対の自信を持っていない。
けれど彼女の必死さは伝わったのだろう思わず「おじいちゃん」と呼びたくなるような笑みを彼は浮かべた。
それは決して人を馬鹿にしたものではなかった。
「よかろう。全て許可を出せるわけでは無いが、今から出来るものはやってみよう。
トリアージについては全くもって卿の言う通りである。
やはり徹底を欠くと分かっていながら見過ごしていた、わしのミスだな……」
「大佐……」
神妙な表情だったのもつかの間、彼は歳に似合わ無い茶目っ気溢れる笑顔を浮かべた。
「席を交換したいものだな。
わしはまだまだ現場に立っていたいにも関わらず、歳だけでここに座らされておる。
……ところで卿はなぜ、ミッターマイヤー艦隊帰りの輸送船団の存在を知っておった?
あれか、これがいるのかの?」
は一瞬頭を抱えたくなるような激しい頭痛に襲われた。
目の前のおじいちゃんは楽しそうに自身の小指をピンと立てて聞いてきたのだ。
いません、とが疲れたように答えれば、詰まらん、と身勝手な感想を隠す事なく漏らした。
(この間、提督が話してくれたからなあ……エヴァから手紙が届くって)