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タイミング良く帰って来た副官に大佐は今実行出来る――彼によって補整された――ものを、伝え行動に移させた。
も言いたい事は言ったのでこの場を辞させてもらおうとした時、エイルにもたらされた通信文を伝える為に一人の下士官がやってきた。

「失礼します。病院船シュナより通信文です。
『満床につき、後方へ下がる許可を求める』」

またか……、大佐が呟いたのをは聞き逃さなかった。
まだまだ負傷者は続々と増えているにも関わらず、ここで仲間の船に抜けられるのは困るはずである。
は大佐の様子を伺うために視線を移動させれば、そこには溜息をつく老人がいた。
満床であれば仕方ない、しかし下がられては残る船に負担は増すばかりである。

「大佐、軽度の負傷者たちを輸送船で帰せませんか」
「……、どういうことかな」
「軽傷者には輸送船に乗って帰ってもらうという事です。
もちろん怪我には充分配慮した上で、輸送船の空きベッド……は無くとも、空いている席に容れさせてもらえれば。
輸送船の人員は常に必要最低限に抑えられているので多少なりとも空きはあるはずです」
「なるほど。今のを聞いていたな、近くにいる輸送船に確認してみてくれ」

下士官は指示を受け、一礼して去った。
この執務室の隣には他の船と連絡が取りやすいように独自の管制室が取り付けられていた。
は許可を得て、ちらっと中を覗き見た。
艦橋とは眺めは比べものにならないが、設備と広さは劣らない程で彼女は驚かされた。
ただ一つ目についたのが、現状での管制室の必要性であった。
あまりにも、活用されていないのがそこに漂う活気や覇気の無さが物語っていた。
定期的に来る報告と救援要請をただ待っているだけの様に見えた。

「何か言いたそうだね、曹長」

横に立っていたデーゼナー大佐が声をかけた。

「噂は聞いていたのだが、卿の元気さは噂以上だな。
どうだ現場は現場でも管制室で他の船と折り合いをつけたりする仕事をしてみないかね、わしにはやりたそうに見えたのだが、違うかな」

はドキリとした。
言われるまで考えてもみなかった事なのに、聞いた瞬間からとても魅力的なものに感じられたからである。

「衛生兵みんなが看護師の仕事をしているわけではない。
わしの様に管理職についている者もいるが、
現場を知った上で輸送船に次に来てもらうタイミングを決め、手配する者もいる。
どうやら今回は普段よりも配置ミスが多かったようだがな」

溜息混じりの語尾に、彼の苦労が滲んでいた。
大型モニターに映し出される艦隊の配置図、いくつもの艦が接舷しているガイエスブルク要塞、病院船内の様子を数値化した様々な情報。

(気がつけば私は一歩足を踏み入れていた)
才覚

09/09/01

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