Lambency
36
「何故、あんな不謹慎にも笑った様な女をお付けするのかお聞きしたい、ミッターマイヤー提督」
ケンプがいかにも不満げな声で沈黙を破った。
視線を下げていた他の提督たちも自然と顔を上げて、ことの行方を見守る。
ミッターマイヤーは表情を変えることなく、少し間をおいてから場に合った静かな声で答えた。
「曹長は侯より知己を得ている。そして俺が知っている人間の中で彼女が適任者であろうと、勝手に判断し推挙した。これに関してはオーベルシュタインも了承している」
「しかし、聊か勝手過ぎませんか」
今まで黙っていたロイエンタールが口を開いた。
「俺も、ミッターマイヤーの人選に異論は無い。奴は決して単なる愚劣な人間ではない」
「同意見だ。少ししか会話したことは無いが、なかなか気の回る良い娘だ」
彼に続けて発言したのはルッツである。
どうも自分と同じ考えを持っているものは少ないと判断したケンプはそこで食い下がるのをやめた。
「先ほどミッターマイヤー提督もおっしゃっていたが、くれぐれもキルヒアイス提督のことが外部に漏れないよう注意だけは忘れないように。
しかし、卿はミッターマイヤー提督とは随分親しい間柄の様だな」
の横を歩くミュラーが話しかけた。
見上げれば表情は暗いもののを気遣う心くばりが感じられた。
はつい嬉しくなり、明るい表情になり頷いた。
「はい、と言いますか、フラウが私の友人でして。フラウの家に遊びに行くうちに」
「なるほどな、そしてロイエンタール提督とも親しくなったわけか」
納得した顔をのミュラーには慌てて付け足した。
「親しくは無いです!なんて恐ろしい事を……」
「恐ろしい事、とは」
面白かったのか、彼は口元を手で隠す仕種をしながら笑った。
「いや、悪かった。ただな、ミッターマイヤー提督がオーベルシュタインに卿を推薦したのだが、その時ロイエンタール提督もその考えを推していたのだ」
「へっ……、あ、へー」
ミュラーが意外そうな表情をした。
「あまり驚かないな」
「あ、リアクションが小さすぎましたか」
「いやそうではなくて、もっと驚くと思っていたんだが」
少し残念そうに語尾を下げるミュラーに、は胸をきゅんと一瞬高鳴らせるも落ち着けた。
ふと過ぎった考えを確かめるために少し間を置いてから、発言した。
「ロイエンタール提督は、なんと言いましょうか、物事をむやみに否定する方ではありませんし、少しおこがましい考えですが、私にチャンスをくれた、もしくは試しているような気がするんです」
「試されている?」
「悪い方では無いんですが……、人が悪い、ちょっと違いますね、悪い意味では言っているわけではありませんが困った方です」
ミュラーはあっさり言い切った彼女に思わず笑みを零した。
(ああ、この笑顔)