私的まほろば
巡り会い 3
戦う時、ホームかアウェーかを選べるなら、ホームがいい。しかし今回は、選ぶ余地無しの完全アウェー状態。陣内栄の代わりに来ているのだから、下手な恥をかくわけにはいかない。とは言え、ラスボスを倒しにきたわけじゃ無いんだから、別に敵では無いのだが、まあ気の持ちようだ。
「はい、季節の替わり目に体調を。家や近所に居る分には元気そうにしているのですが、やはり、遠出は出来そうになくて……」
「そうでしたか…陣内先生にはご心配をおかけしてしまいました。こちらこそ、連絡を差し上げるべきでしたな」
「いいえ、そんな。けれどもし、長野に寄られる機会がありましたら、是非いらして下さい。曾祖母もきっと喜んで、元気になってくれるでしょうから。…口では素直に申しませんが、行洋さんのご活躍を耳にするたび、本当に嬉しそうにしていましたから」
「お言葉に甘えて、今度お邪魔させて頂きます」
「いつでもお待ちしています。その時は、アキラ君も一緒に」
ちらっと視線を動かしアキラ君を見れば、微笑み返してくれた。緊張していても自然に笑みが零れてくるのは、彼ら親子の人柄のおかげに違いない。(なんか笑顔が可愛いんだよね、この親子!)かなりの時間正座して背筋を伸ばしていながら、それを苦痛に感じない様になるまで厳しく指導してくれたおばあちゃん達に、初めて感謝したくなった。目の前のラスボスさん改め行洋さん(ラスボスって呼んでてごめんなさい)と、猫被りであっても対等に話しが出来ているのは、おばあちゃんの教育があったからこそだ。でも、もしこの人まで親戚にいたら(栄おばあちゃんと万里子おばさんで充分過ぎる)、さぞや私は厳しく育てられただろう。その証拠にと言うか、先ほど紹介されたアキラ君はとても中学生には見えない位しっかりしていました。(おかっぱだったけど)それに、1番始めに会った笑顔の青年は芦原さん、眼鏡が似合う人(だけど煙草を吸ってるから嫌い)は緒方さんと言い、行洋さんのお弟子さん達らしい。
「しかし、陣内先生に、もうこんな立派な曾孫さんがいらっしゃるとは。曾孫が産まれたと喜んでいらしたのは、もうそんなに前の話でしたか」
「先生、さんに悪いですよー、そんなこと言っちゃ」
芦原さんが苦笑しながら会話に参加してきた。どうやら、検討は止めてしまったらしい。
「いや、これは私としたことが失礼しました」
「でも、さんっておいくつなんですか? 俺と同じか、ちょっと下くらいに見えるけど、落ち着いてますねー」
「芦原、女性に早々年齢を聞くもんじゃないって事くらい、知っとけ」
と、芦原さんに注意したわりに、いま緒方さんは私に視線をよこしながら、絶対私の年齢を予測してます。普段ならおふざけでボケをかましたい所だけど、さすがに自重しておくことにして、品良く苦笑を零してみせたり。(あれ、なんか私悪女キャラになれる?)
「あ、なら私若いので答えられます。心配要りませんよ、緒方さん」
「ほお」
「18です。5月で19歳になります」
(未成年でしたね、緒方さん)
(アキラ君、キミはずいぶんと落ち着いているな)
2010/03/20