私的まほろば

巡り会い 4

栄おばあちゃん、報告します。
行洋さん(ラスボス)一門に陣内、ただいま完全勝利いたしました。

普段、家では馬鹿な子扱いを受けていようが、私だってやれば出来るんだと胸を張って帰ろう…と思ったけれど、そしたら「それがガキなんだよ」と理香おばさんあたりに笑われそうな気がする。理解者は少ないが、たとえ胸のうちに具体的な王子様が住んでいても、だって大学生なのだ。

「お若いさんには、とんだ失礼を」
「いえ、どちらかと言えばちょっぴり嬉しかったです。親戚中に幼い、幼いっていつもからかわれてまして」

思わず嬉しくて、へへっと照れながら笑ったら、周りからも苦笑や微笑がこぼれた。

(緒方さん、陣内家ってどんだけ戦闘レベル高いんですか?)
(だから俺に聞くな、戦闘レベルってなんだよ)
(戦闘レベルですよ!)

…なんかサイドから聞こえてくる会話が気にならないこともないけれど、せっかくついた高い評価をわざわざ落とす必要も無いだろう。

「お父さん、その、陣内栄さんとはどういった知り合いなんですか」
「ああ、そうだな。お前にも、話したことは無かったか…」

そこで、がそっと挙手した。

「すみません、実は私も、行洋さんと曾祖母との関係、気になっていました」

「おやアナタも」と行洋さんが驚かれていたけれど、どうやら話してくれるようだ。行洋さんは、着物の袖に左右互い違いの腕をつっこむと、少し思い出すような仕草をした。その動作一つが自然で、時代劇に出てくるような人が同じ動きをしたって、彼ほど格好良くは出来ないだろう。つられて私たちは(私だけじゃなくてアキラ君とお弟子さんたちまで)聞く姿勢に入ってしまう。

「別に、たいした話ではない。陣内先生が、初めて私に碁を教えてくださった方なのだ」
「おばあちゃんが……」
「小さい頃、短い間だが長野に住んでいたことがあった。来たばかりで友人が居らず、一人暇を持て余していた私に碁を教えて下さったのが、陣内先生だ。回りの大人たちが『陣内先生』と呼んでいたから、私も気がついけばそう呼んでいた」

ゆっくり思い出すように行洋さんは語っていった。栄おばあちゃんの人脈の広さにはいつも驚かされる。アキラ君には別の感動があったのだろう、目が大きく開かれていて可愛い。

「へー、先生の先生かァ。じゃあ、ちゃんも碁は打てるの?」
「それがさっぱりルールについていけなくて、五目並べしか出来ません。曾祖母によく嘆かれます」

申し訳無い、と肩を竦めれば芦原さんが軽く笑って流してくれた。一般的な碁の師弟関係がどんなものなのかは知らないが、ここは居心地の良さそうな場所に感じられる。息子さんとお弟子さんの仲も良さそうで、私まで寛いでしまいそうだ。
…さっきから、緒方さんの視線は痛いままなのだが。

(アキラといい、しっかりしてる子が多いなあ)
(芦原さん、いくらなんでも一気に年下扱いし過ぎですよ)

2010/03/22