全世界に10億人もの利用者がいるOZが、システムエラー。
なんでも上手くメールが届かない、管理棟に管理者が入れないなど、結構色々困ったことになっているらしい。ならば私もと、適当な友人にメールをしてみる、なるほどエラーになって返ってくる。(年明け早々の時間帯にメールの制限がかけられちゃうからこそ、その時間に送りたくなっちゃうタイプなんだよなー、私)
しかし、これは確かに困ったことだ。
緊急事態が起きたときに大変だって事くらい、私にだって分かる。一つのものに統一されるということは、規格が一緒だったりして便利なことは多い。けれどその唯一の存在が駄目になったとき、あまりにもその被害は甚大だ。そして今、世界がそれを痛感している真っ最中である、といった感じ。
はっぴばーすでー つーゆー はっぴばーすでー でぃあ あばぁちゃぁん ♪
夏希のウクレレに合わせて歌うが、これがまた結構な緩さで笑わずにはいられない。下はおちびさん、上はいい年こいたおじさんおばさんまで、仲良く歌っている図は滅多にお目にかかれないだろう。縁側で携帯をいじっている侘助おじさんが一番落ち着いているように見えちゃうのだから、これもまた面白い。OZのトラブルなんて、まるで陣内家には関係のないことのようだ。
「おう、テレビついたぞー」
「ほんとー、やったあ」
「ったく、お前じゃないだろうなあ、コンセントを抜くなんて暴挙にでたのは」
「おじいちゃん、いくらなんでも私だってそんなことはしないよ!」
治ったテレビに映っていた了平は、そんな大それたこと言っちゃっていいのか聞いているこっちが恥ずかしくなるようなことを喋っている。そんな了平に居間が盛り上がった瞬間、画面は高校野球とは正反対にとても静かなものに代わった。一瞬アナウンサーが映ったあと、ぱっと証明写真の様に切り取られた静止画が映し出された。見覚えのある輪郭と髪型、目元にだけあてられたモザイク。
<<警察庁では、不正アクセス禁止法の疑いで、都内に住む17歳の少年を全国に緊急指名手配しました。この少年は昨夜、外部からは不可能といわれている、OZの内部へ侵入し――……>>
「ほら、やっぱり彼、年下じゃん」
私の呟きを聞いていたのか、理一おじさんが私の頭を優しく撫でてくれた。
<<現在も混乱は続いており、これらの事態における被害総額は――>>
ニュースは陣内家の様子を知る筈もなく、ただ淡々と現状を告げていく。そんな居間に、突如としてキキィィイ――!という、なんとも耳障りな音が響き渡った。庭に目を向けると、理香おばさんが自転車をほっぽり出して居間に駆け込んできた。お兄ちゃんも庭まで乱入してきたRX-7から降りてくる。
「夏希ぃぃぃい!」
「これ!どーいうこと!」
二人して息を切らして、同時に夏希に詰め寄る。
「派出所のファックスにコレがっ……、指名手配犯だぞ?!今すぐあいつと別れろ!」
「役所でいま内緒で検索したんだけど、旧家の出なんて嘘!
普通のサラリーマンの息子じゃないの!しかも高校生、年下よ!」
「「夏希!」」
あなたたちのこだわりはそこなのかと、人間模様が現れるのが面白い。
それはさておき、あれほど礼儀正しい健二君(年下だからさん付けは無し)が全国の指名手配犯とはどうもしっくりこない。
詰め寄られた当の夏希は、ばっちり冷や汗を流していた。
(10/02/18)