私的まほろば
まだ知らない
「つ、疲れた……」
おばあちゃんの傍で手伝いが出来たのは良い経験になることは否定しない。けれど正座に疲れて胡坐をかくとすぐさま黙ったまま静かに膝を叩かれて、また正座に直さなければいけないのは恐ろしかった。未だに足は痺れているおかげで膝立ち歩きだ。なんとかたどり着いた先は、佳主馬のいる納戸。さっきすれ違った夏希に、キング・カズマが暴走したAIに負けたと聞いたときは驚いた。
(そして夏希は痺れた私の足を笑顔で突いて逃げた、この大正娘が!)
「かーずまくーん、遊びましょー」
「今、忙しいんだけど」
開けられたままの戸から声を掛ければ、佳主馬は振り返ることも無くピシャリと返す。戸は閉まっていないのに、閉め出された気分だ。確かになにやら忙しそうにノートパソコンに向かっている。
(なんだ、心配はいらなかったか)
可愛い従弟の成長が嬉しくもちょっと寂しい気持ちになりつつ、にやにやしながら居間へ向かうことにする。
「ねえ、」
数歩進んだ時、後ろから声を掛けられた。振り向いても誰もおらず、納戸からだと理解する。
「なにー?」
「姉ちゃんの、アカウントは大丈夫か確認しといたほうがいいよ」
そういえばそうである。お兄ちゃんから電話がかかってきた時以来、携帯にノータッチ。
「どうせ、姉ちゃんの事だからろくにチェックして無いでしょ」
まるで私の心を読み、タイミングを計ったように付け足すのだから、図星でポケットから携帯を取り出す動きが一瞬固まってしまった。OZにアクセスしてみれば、正常にログインすることを確かめる。私のアバターであるアライグマの姿をしたがぴょんっと画面中央に現れた。何通かメールを手に持っている。
「大丈夫でしたー。ありがとう」
「ん、ならいい」
そっけない返事だったけど、彼なりの気遣いが嬉しくて思わず立ち上がったら、まだ足は痺れていて情けない声を出してしまった。
と、私なりに一生懸命頑張っても、そんなのは知ったことではないおばさんズにその後私は拉致られて台所へ。結局、今日のドタバタで来る筈だった人々が何人か来れなかったらしい。(そもそも誰が今日来るとかの予定を私は全く把握していないから関係ないが)それでも十分すぎるほどの人数はいるのだから、夕食作りだって楽じゃない。遠慮の無いストレート過ぎる会話のおかげで、今日の状況と女性陣の心情は良く分かったが、私が『役立たず』な男性陣と一緒に括られたのは不服である。(私、今日とても頑張ったのに!)だからといってここで反論すればより一層けちょんけちょんにされることは間違いないから、黙っておく。
(2010/05/05)