私的まほろば
怒られた
「するとお前は仕事が無くて寂しかったわけだ」
「まあ、要約されてしまうとそうなるかなあ……」
「ん、なにか不満だったか?」
別にー、流れ去っていく窓の外を見ながらは呟いた。行きはタクシー、帰りはミリ波通信用アンテナモジュール付きの自衛隊専用車両、突然一緒に行くかと大好きな理一に誘われて深く考えずについていった結果がこれだ。もはや溜息ではなく感嘆の息を吐くしかない。陸上自衛隊松本駐屯地からあっさり借りてきてしまった様にには見えたが、そう簡単に出来ることでは無い筈である。移動中と、理一を待っている間に時間はたっぷりあったため、ふとは自分の立ち位置を振り返って一瞬目の前が真っ暗になった。無言の車内はネガティブ思考を加速させるだけで、いくら振り払おうと違うことを考えても結局最後は同じところにたどり着いてしまう。
「」
「んー?」
心ここに在らずなの返事に理一が苦笑を浮かべる。
「、どうしたさっきの元気が無いぞ」
「んー、なんだろう。すっきりとしない、かな……」
「すっきりとしない、か。何がすっきりしないのか、大好きなおじさんに話してごらん」
「……じゃあ大好きなおじさんに話してみようかしら」
肩肘ついて掌に顎を預けていた姿勢をやめて、深く席に座り前を見据える。流れる景色はこんなに早いのに、雲の流れはなんてゆっくりなことだろうか、うっかりどうでもいいことを考えてしまう。
「皆はさ、こうやってやることがあるんだよね」
「ああ」
「でも私は女性陣の中では戦力外だし、だからといっておじさんたちの仲間に入れるほど何か技術や能力やつてやコネを持っているわけじゃない」
「……、」
「わたしってさあ、いつものんびり生きているせいでさ、ほんと、……役立たずだなあって、」
の声が徐々に涙に震え始める。それに気がつかない理一ではないが、生憎運転中なのため余所見をするわけにもいかずただ相槌を打つ。
「おばさんたちは、おばあちゃんの葬式のため頑張ってるけど、私なんも手伝えないし、ぼさっと、するしか、出来なくて」
「うん」
「奈々さんは、笑ってればいいって、言ってくれたけど、やっぱり、なんも、出来ないことに、変わら、ないよ……」
「……」
「佳主馬だって、悔しいのに立ち直ったし、私、ほんと、使えない」
「!」
理一が珍しく厳しい声で名前を呼んだ。驚きは涙を拭いながら隣に座る理一を見れば、険しい表情のまま前を向いていた。
「、そんなことをずっと考えていればお前の納得のいく答えが出るのか?」
ぎゅっと膝の上で拳を握ったままは答えられない。いつに無く厳しい理一に見開いた瞳からはとめどなく涙が溢れてくるが、それさえも拭うのを忘れてしまう。
「出ないだろ。悩むのは悪いことじゃない、けれど悩むのは、良い答えを出したいからだ、違うか?」
理一は横目で一瞬を見て、また視線を前に戻す。
「お前は健二君と佳主馬の背中を押した。結果諦めかけていたことが動き出そうとしている。それはお前のおかげだ。結果はどうであれ誇っていい。、お前が役立たずだったかどうかは、全てが終わってみないと分からない。それに判断するのはお前じゃなくて、お前以外の人間だ。そして俺は、を役立たずだなんて思ったことは無い。奈々君が先に言ってくれたらしいが、皆、お前の優しさと笑顔には救われているんだ。お前はお前らしくしていることが、一番なんだよ。さあいい子だ、家に着くまでには泣き止めよ?」
(2010/05/16)