私的まほろば

必要とされる喜び

「ただいまー」
「おまたせ」
「えっあ、はい、お帰りなさい……」
「ミリ波通信用アンテナモジュール、松本の駐屯地から借用してきた」
「理一さんて……ほんとは自衛隊のどこ所属なんですか?」
「ん?ちょっと言えないとこ」

健二君が目と口を開いてしまうのは不可抗力だと思うが、気にせず相手の反応をわかっていながらさらっと言ってしまう理一おじさんが好きで堪らないので良い事とする。

「おっと、なんか大物が来たから場所を変えないとな。ココで降りるか?」
「……降りたらなんか良くないことが起きそうな気がするから乗っておく」
「了解」

ドドドと大きな音がより大きな音になっていく。何なのかは察知できないがとてつもなく大きなものということだけは理解した私たちは一旦そこを離れたのだが、後から聞いた話、漁船が池に着水した際、庭が水浸しになったそうな。降りなくて良かったとしみじみ思った。



ー!あなたどこ行っていたのよ、こんな忙しいときに!」

縁側から家に上がって早々万理子おばさんが目ざとく私を発見し、ぼさっとしてないで!と怒られた。

ー!お前、ちょっと配線手伝え!」

なにやらスーパーコンピュータの設置をしていたらしい父さんから手伝い要求。

姉ちゃん、何あのアンテナ霊柩車!」
「さっき乗ってたでしょ!」
「ずりー!」

群がってきた、ちびーズ。
一歩後ろから見上げてきた加奈。

「おねえたん、おめめ、あかいよ?」

は思わず膝をついて、加奈を抱きしめた。そっと包み込んだ加奈は子供らしく体温は高めでちょっと熱いくらいだが、今のには心地良く、自然と柔らかい笑みが浮かび上がってくるのを確かに感じた。

「お姉ちゃん、泣き虫だから仕方が無いの!」

むぎゅー!っと自ら効果音をつけて今一度加奈を抱きしめれば、回りのちびーズも参戦してきて団子状態になってしまった。(……おばあちゃん、私笑えてる!)もはやちょっと熱いではなくかなり熱いのだが、そんなのお構い無しにきゃっきゃはしゃいでいたら、再び万理子おばさんに怒られてしまったが、それさえもなんだか嬉しく感じられる。

!ちょっとは手伝いなさい!」
「はーい!」

名残惜しい気持ちを胸にちびーズと別れを告げた。権力者に逆らわない方が世の中都合がいいので、父さんには悪いが、万理子おばさんの手伝いに行くことにした。

(役立たずじゃないって、信じなきゃ)

(2010/05/17)