私的まほろば
運も実力のうち、らしい
大型液晶テレビの大画面を目の前にして、夏希一人を前に座らせ、他のメンバーは一歩下がったところで待機。大家族が一つの和室にそろった様子はただでさえ迫力があるのに、今はさらに各々が気迫で満ち溢れている。思い思いに自分の持つツールでログインする。皆が画面を見つめるなか、NATSUKIが発言した。
『お互いのアカウントを賭けて、勝負よ!!』
健二君たちが予想した通り、効果音とともにラブマシーンがゲームに参加してきた。画面におさまりきらないほどの、大きく黒いうさぎの様な形をしたアバターが現れる。きたぁー!と、も一緒に声をあげる。ラブマシーンが勝負に乗ってくることが大前提の策なのだ、ここで乗ってくれなければどうしようもない。勝負に乗ってきただけでも、十分テンションが上がる。仮アカウントのためゲームに参加できない健二君が、佐久間君に指示を出す。同じ空間に居るのに、何故横から話しかけないのかがちょっと不思議だが、画面に集中した夏希の意識をそがせないための気遣いだろうということにしておく。こんな時にそんなことにわざわざ突っ込んで茶々を入れるのは、頑張っている彼に申し訳ない気がしたというのもある。
そんなことを考えながら携帯を片手に余所見をしている間に、なにやらゲームの説明は終わり、周囲が一斉にこいこい!と叫びだしたので、気を抜いていたは驚いた。気がつけば、夏希は見事最初の勝利を収めてしまったようだ。レートをあげて、休む間もなく次のゲームへ。
もうアカウントを夏希に預けてしまったのだから、細かいことは気にしないでおこう。ログインさえしていればよいのだからと、は侘助の傍へ寄り、カタカタよく分からない記号の羅列が勢いよく打ち込まれていくノートパソコンの画面を覗き込む。
「ったく…、てめーもあっちでこいこいしてろ」
「んー、だって見てるだけって妙にドキドキして嫌だし。珍しく一生懸命な侘助おじさん見てた方が面白い」
「……お前はちっこい頃から何も変わんねぇな」
「それ、褒めてますか?」
「生憎、俺は理一みたいにお前に甘くはないぜ」
「いやいや、そんなに真正面から褒められると、照れてしまいますな」
「褒めてねーし、その態度のどこが照れてんだよ…。――しっかし、すげぇな」
高性能AIの解体という恐らく相当困難な作業をしながらも、これだけ馬鹿げた会話をする余裕がある侘助に、は内心で感心しながら、体育座りでその隣に陣取った。夏希が順調にアカウントを取り返していくのが、画面の端に出ている数字で良く分かる。手札を見ているより、数字だけを見ていたほうがまだ落ち着ける。
「ほんと、夏希の勝負運強いなあ」
「……それも否定しないが、俺が言ってんのはこっちだ、こっち」
そう言って、右手をキーボードから離し画面の右上の数字を指差した。その数字は恐ろしい速さで回転し、数字を伸ばし続けている。
「…その数字はなんですか」
「このゲームの、現在の観戦者数」
は瞬き、己の目を疑った。
(2010/08/29)