私的まほろば

1つになって

健二君の、解けた!の間隔がどんどん短くなっていく。けれど、相手と同じ事を繰り返しているばかりで、時間はドンドン過ぎていく。

「佳主馬!あんたのアカウントは帰ってきたんじゃないの!」

思わず佳主馬に叫んでしまった。佳主馬は目が覚めたように、ノートパソコンを立ち上げる。間もなくKAZMAがログインした。いつも通り見守ることしか出来なくて歯がゆいけれど、不思議と不安は無い。

『大丈夫。あんたなら、あんたたちなら出来る』

栄おばあちゃんが、そう言ってくれているような気がした。

『…いつもみたいに、笑い、なさい』

「っく、やられた!」「もう時間が無い!」「残り2分!」「あ…暗算……?!」

背後で悲鳴に近い台詞が飛び交う。目の前では理一おじさんが難しいことを頑張っている。普段涼しい顔でニヤニヤしているおじさんだけど、熱くなってもカッコいいんだなあと不謹慎なことを考えてしまう。

「佳主馬、奴を叩け!奴の守備力を0にした!」
「体力回復オッケイ!」
「よろしくおねがいしまあぁぁぁぁぁあああす!」
「邪魔をするなー!」

――片は一瞬でついた。今までの抵抗が嘘の様に、ラブマシーンはあっけなく画面の中で消えていった。削除の処理は終わり、それで終了。

「や……やった……」
「やった、けど…」
「み、皆固まれ!」

空にキラーンと光る何か。誰おじさんかは分からないが誰かがそう叫び、皆我に返ってちびーズを中心にダッと駆け寄る。人の輪の外側に居た私を、理一おじさんが腰を抱いてぐっとおしくらまんじゅう状態の中に押しやる。何が起きてどうなっているのかも良く分からないうちに、どデカイ衝撃波が襲ってきたのが分かった。誰かを思いっきり抱きしめて、誰かに思いっきり抱きしめられて、皆で堪える。どれだけの時間が経ったのかさっぱり分からないし、いつになったら大丈夫に成るのかも分からない。けれど頭の片隅で、これこそ文字通り家族が1つになった時だ!と思って可笑しな気分になっている自分がいた。

(2010/09/03)