私的まほろば
朝顔と、白い雲、青い空、さあみんなでこいこい!
はっぴばーすでー とぅーゆー!
おめでとう、おばあちゃん!
お葬式兼お誕生日会なるものは、結局そのままの日付で8月1日現在行われている真っ最中である。皆で歌いパーティーモードな陣内家に、弔問に訪れたお客様たちは皆、当然だが困り果てている。広い庭の一部でおじいちゃんによる新潟直送のイカの丸焼きが振舞われ、また別のところでは湧き出ている温泉について話し合っている人もいる。了平は優勝旗を片手に栄の死を知り大泣きしている姿を、カメラに収められている。
もはや開き直った真理子おばさんは強いもので、おっほっほっほと笑って弔問の人々を上手くあしらっている。そんな中、私も、陣内家の娘としてまあ色々と使える人脈を使わせていただいたので、逃げることも敵わず、今回お世話になった人たちを中心に挨拶まわりをしている。人脈――人と人との絆は宝。ずっとそう言われてきたけれど、今回のことで初めて実感できた気がする。私はこれからも陣内家の人間として生きていくだろう。『他人を守れずに己は守れない』と、そう己に言い聞かせながら。おばあちゃんと同じ形ではなくとも、人と人とのつながりを守っていきたい。やっと自分の進みたい方向が見えてきた。
「!なにぼさっとしてるの!ほーら、写真取るわよ!」
聖美おばさんに声をかけられて、没頭していた思考から浮上する。
皆で並んで、ハイポーズ。ハイテンションな皆さんはそのままなにやら健二君の今後について話しだした。純情な高校生の告白に、性質の悪い大人たちがやんややんやとはやし立てる。面白いのは良く分かるが、夏希の両親の目の前でよくやるものだ。ちゅーしろ、ちゅーしろ!と完全に盛り上がっている。私も佳主馬の後ろから堂々と見ているから実はみんなのことを非難出来ないけれど、心の中は自由なので気にしない。
「姉ちゃんは、さ、彼氏、いないの……?」
佳主馬が何を突然聞き出すのかと思えば、目の前で夏希が健二君の頬にキスして鼻血を吹き出していた。
「彼氏かあー…ふふふ、王子様はいるけどねえ」
「俺が、どうしたって?」
「別に……」
「ねえ佳主馬。男も女もね、…」
言いかけておいて、にやりと笑って理一おじさんを見たら、同じ事を考えていたらしく、目が悪戯に光った。
「「ちょっとミステリアスな方がモテるのよ(んだ)」」
見事にハモリ、つい笑ってしまう。佳主馬は眉を顰めてちょっと不愉快そうにしているが、この子はこの位が丁度良い。なんだか面白くて笑っていると、真理子おばさんに呼ばれた。
「――さんがいらっしゃってるわよ!なんだか、アンタにお礼を言いたいとか…」
「はーい!」
完(2010/09/05)
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